研修や着替えも残業代の対象?労働時間の「グレーゾーン」と実務対応
人事・労務担当者や経営者の皆さま、日々の労務管理お疲れ様です。
「終業後の勉強会は残業代を払うべき?」「制服への着替え時間は労働時間に含まれる?」といった現場からの質問に、どう対応すべきか迷うことはありませんか?
結論から言うと、これらが労働時間に該当するか否かは「使用者の指揮命令下に置かれているか」という点で判断されます。 今回は、厚生労働省の基準をもとに、未払い賃金トラブルを防ぐための明確な判断基準と実務上の対策を解説します。
研修・教育訓練:その勉強会、本当に「自由参加」ですか?
研修や勉強会が労働時間になるかどうかは、実務で最も判断に迷うポイントですよね。原則として、業務上の義務がなく自由参加であれば、その時間は労働時間には該当しません。しかし、会社側が「自由参加」と主張していても、実態として以下のような場合は労働時間に該当し、賃金の支払い義務が生じます。
- 就業規則で不参加に対する減給処分が定められている場合
- 参加しないと実際の業務を行うことができない場合
- 受講が正社員登用の要件とされ、会社が参加に向けてシフト調整している場合
| 労働時間になるケース(実質強制) | 労働時間にならないケース(任意) |
|---|---|
| 休日に参加を指示され、後日レポート提出が課される社外研修 | 終業後の夜間に開催され、弁当は出るが不参加でも不利益がない勉強会 |
| 業務に就くため不可欠とされている事前の業務見学 | 会社が外国人講師を呼んで開催する、業務と関連性のない任意の英会話講習 |
着替え・始業前の待機時間:ルールの整備状況を確認
制服や作業着への着替え時間はどうでしょうか? 制服の着用が任意であったり、自宅から着用して通勤することが認められていたりする場合は、労働時間に該当しません。
また、駐車場確保や渋滞回避のために労働者が自発的に早く出社し、始業まで業務の指示を受けず過ごしている時間も、労働時間には含まれません。もし早く来る社員がいる場合は、執務室以外の休憩スペースを利用できるようにするなどの対応策が考えられます。
待機時間・移動時間:手待ち時間か、完全な自由か
夜間の緊急対応当番などで、社員に携帯電話を持ち帰らせるケースもあります。 このような場合でも、電話や来客対応の必要がなく、帰宅後に自由に過ごすことが認められていれば、その待機時間は労働時間に該当しません。
出張や直行直帰に伴う移動も同様です。 取引先へ自宅から直行する場合や、前泊のために休日に移動する場合であっても、移動中に業務指示がなく、移動手段の指示も受けず自由が保障されていれば労働時間とはみなされません。
まとめ:取るべき具体的なアクション
グレーゾーンを放置すると、後日「未払い残業代」として労働基準監督署からの是正勧告や多額の請求を受けるリスクがあります。
実務担当者は、以下のステップで速やかに社内ルールを見直してください。
- 研修等の扱いについて「参加指示の有無」「不参加による不利益の有無」を労使であらかじめ話し合い、確認する
- 労働時間としない研修は、通常勤務と明確に見分けられる服装で行うなどのルールを定める
- 上記のような実施手続や取扱いについて、書面により明確化する
(詳しくは、こちらをご覧ください)
・<リーフレット「労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い」(令和8年6月)>(厚生労働省PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/001717825.pdf
注意
この情報は一般的なものであり、個々のケースによって異なる場合があります。個別の事案については、行政機関または社会保険労務士などの専門家にご相談してください。
