賃金は全額払が原則なのに、なぜ給料から引かれるお金があるの?
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賃金は全額払うのが原則なのに、なぜ給料から引かれるお金があるの?
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労働基準法という法律で、会社は従業員に賃金を全額支払うことが原則と決められています。ただし、この原則には以下の例外があります。
・法律で決まっている場合: 所得税、住民税、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)などは、給料から引かれることになっています。これは会社が勝手に引いているわけではなく、法律に基づいています。
・労使協定がある場合:法律で決まっているもの以外のお金(例えば、社宅の家賃、社員食堂の食事代、会社の積立金など)を給料から差し引く場合は、会社と従業員の代表が話し合って「賃金控除に関する労使協定」という書面での約束をする必要があります。この協定がないと、会社は勝手に給料からお金を引くことはできません。
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「労使協定」は何のために必要なの?
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会社が従業員の給料から勝手にお金を引くのを防ぐためです。この協定がないのに法律で決まっていないお金を引いてしまうと、会社は労働基準法違反となり、罰則の対象になることがあります。従業員との間のトラブルを避け、お互いに納得した上で給料の管理をするために、とても大切な約束事になります。
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労使協定には、どんな内容を書けばいいのですか?
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主に次の内容を具体的に記載します。
・何を引くのか(控除項目): 例:「社宅家賃」「社員旅行積立金」「互助会費」など、具体的な項目を明記します。ただし、何でも引けるわけではなく、理由が明確で社会的に認められる範囲の項目に限られます。
・いつ引くのか(控除時期): 例:「毎月の給料日」「ボーナス時」など、時期を明確にします。
・いつまで有効な協定なのか(有効期間): 一般的には1年など、有効期間を定めます。
・誰と誰が約束したのか(当事者): 会社名と、従業員を代表する人(労働組合の代表、または従業員の過半数を代表する人)の名前を書いて、署名・押印します。
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労使協定を結ぶとき、会社は誰と約束(署名・押印)すればいいのですか?
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次のどちらかの相手と約束(署名・押印)を結びます。
1.労働組合: 会社に労働者の過半数を組織する労働組合がある場合は、その労働組合と協定を結びます。
2.労働者の過半数を代表する者: 労働組合がない場合は、従業員全員の過半数を代表する人と協定を結びます。この代表者は、会社が勝手に選ぶのではなく、従業員が話し合って民主的に選ぶ必要があります。
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労使協定を結んだら、役所(労働基準監督署)に届け出る必要がありますか?
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労働基準監督署への届け出は不要です。会社の中で適切に保管しておけば問題ありません。ただし、協定の内容は全ての従業員が確認できるように、社内掲示板に貼ったり、社内ネットワークで公開したりして、きちんと周知することが大切です。給料明細には、何がいくら引かれたのかを明記する必要があります。
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従業員が同意しないのに、会社は勝手に給料からお金を引いていいのですか?
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いいえ、できません。給料からお金を引く場合は、従業員が自分の意思で同意したことが前提です。会社が強制したり、プレッシャーをかけたりして同意させた協定は、無効になる可能性があります。従業員の自由な意思が尊重されることが非常に重要です。
(詳しくはこちらをご覧ください)
・事業主の皆様へ 賃金控除に関する労使協定を締結していますか?(神奈川労働局 相模原労働基準監督 リーフレットPDF)
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/content/contents/002230320.pdf
注意
個々の事情によって判断が異なる場合があります。個人で判断する前に、行政機関または専門家にご相談してください。