技能実習生の指導員の「みなし労働時間制」 適用を否定した二審判決を破棄(最高裁)
外国人技能実習生の指導員が会社の外で働く場合に、「みなし労働時間制」を使えるかどうかが争われた裁判で、2024年4月16日に最高裁判所の判決が出ました。
「みなし労働時間制」とは? 会社が従業員の正確な労働時間を把握するのが難しい場合に、「毎日決まった時間だけ働いた」とみなして給料を計算する制度のことです。
これまでの裁判の流れ
- 最初の判断(一審・二審): 指導員は訪問先や仕事内容を日報で報告していたため、「労働時間は計算できる」と判断。みなし労働時間制の適用を認めず、指導員を管理する団体に残業代の支払いを命じました。
- 今回の最高裁の判断: 最高裁は、これまでの判断を取り消しました。その理由は以下の通りです。
- 指導員の仕事は、実習生の指導だけでなく、生活相談や関係機関との連絡など多岐にわたる。
- 日々のスケジュール管理も指導員自身が行っている。
- そのため、管理団体が指導員の実際の勤務状況を具体的に把握するのは簡単ではない。
今後の働き方への影響は?(裁判官の補足意見より)
今回の判決には、以下のような補足意見も付け加えられました。
- 最近は、出張や外回りの仕事だけでなく、在宅勤務やテレワークなど、会社以外の場所で働く形が増えている。
- 通信技術の発達もあり、働き方はどんどん多様化している。
- そのため、「会社が従業員の勤務状況を把握するのが難しいかどうか」を、働き方の種類だけで一律に判断するのは難しくなってきている。
- 裁判所としては、今後、一つ一つのケースの具体的な状況をよく見て、「労働時間を算定し難いとき」にあたるかどうかを慎重に判断していく必要がある。
この考え方は、今後の労働時間に関する裁判所の判断にも影響していくと考えられます。
(詳しくは、こちらをご覧ください)
・<最高裁判所ホームページ:令和6年4月16日・最高裁判所第三小法廷判決>(裁判所ホームページ)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92906
注意
個々の事情によって判断が異なる場合があります。個人で判断する前に、行政機関または専門家にご相談してください。