割増賃金の計算方法:正しい「1時間あたりの賃金」の出し方
残業代などの割増賃金を正確に計算することは、労務管理において非常に重要です。計算の土台となる「1時間あたりの賃金」を間違えると、意図せず未払い賃金が発生するリスクがあります。
ここでは、経営者や実務担当者が押さえておくべき計算のポイントを分かりやすく解説します。
割増賃金の基本計算式
割増賃金は、以下の式で算出します。
割増賃金 = 1時間あたりの賃金 × 割増率 × 労働時間数
この計算の起点となる「1時間あたりの賃金」を導き出すために、まずは月々の給与のどの項目が計算の「基礎」に含まれるのかを確認しましょう。
1.原則:すべての賃金が「基礎」に含まれる
労働の対価として支払う賃金は、名称に関わらず原則としてすべて割増賃金の基礎に含めます。
基本給はもちろん、「役職手当」「職務手当」「資格手当」「皆勤手当」などもすべて算入が必要です。
2.例外:基礎から「除外できる」7つの手当
労働基準法では、個人の事情に基づいて支給される以下の7つの手当に限り、労働との直接的な関係が薄いとして除外を認めています。
- 家族手当(扶養家族数に応じて支給するもの)
- 通勤手当(距離や実費に応じて支給するもの)
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当(家賃やローン額に応じて支給するもの)
- 臨時に支払われた賃金(結婚祝金など)
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
【重要】一律定額支給は除外できません
最も注意が必要なのは、名称が「家族手当」、「住宅手当」や「通勤手当」であっても、費用に関わらず一律定額で支給している場合です。この場合、除外手当とは認められず、割増賃金の基礎に含めなければなりません。
3.「1時間あたりの賃金」を算出する3ステップ
月給制の従業員の場合、以下のステップで計算します。
【計算ステップ】
- (A) 基礎となる月額賃金を確定する (A) = 毎月の給与総額 - 除外できる手当
- (B) 月平均の所定労働時間を算出する (B) =(365日 - 年間所定休日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12ヶ月
- 1時間あたりの賃金を算出する (A) ÷ (B)
【計算例】
給与・労働条件の内訳
- 基本給:220,000円
- 役職手当:30,000円
- 住宅手当:20,000円(全従業員に一律支給)
- 通勤手当:15,000円(実費支給)
- 1日の所定労働時間:8時間
- 年間所定休日:120日
Step1: 基礎となる月額賃金(A)の計算
一律支給の「住宅手当」は除外できないため、基礎に含めます。除外できるのは実費支給の「通勤手当」のみです。 (A) = 285,000円(総額)- 15,000円(通勤手当)= 270,000円
Step2: 月平均の所定労働時間(B)の計算
(B) =(365日 - 120日)× 8時間 ÷ 12ヶ月 = 163.33時間
Step3: 1時間あたりの賃金を計算
270,000円 ÷ 163.33時間 ≒ 1,653.09円 (※この金額が、残業代計算の基礎単価となります)
まとめ
賃金規程で「住宅手当」などを一律支給にしている場合、計算から除外してしまうと未払い賃金の原因となります。貴社の支給実態が法律のルールに沿っているか、改めてご確認いただくことをお勧めします。
(参考資料)
・割増賃金の基礎となる賃金とは?(厚生労働省 リーフレット PDF)
https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/library/tottori-roudoukyoku/pdf/26kajyu_4.pdf
注意
個々の事情により判断が異なる場合があります。具体的な運用については、労働基準監督署や社会保険労務士等の専門家へご相談ください。
