賃金全額払いの原則と「給料から引かれるお金」
労働基準法では、会社は従業員に対して賃金の全額を支払うことが義務付けられています(賃金全額払いの原則)。しかし、実際には給料からさまざまなお金が差し引かれています。これには法的な裏付けと、必要な手続きが存在します。
1.なぜ給料からお金を引くことができるのか?
賃金全額払いの原則には、法律で認められた以下の例外があります。
- 法令に別段の定めがある場合: 所得税や住民税、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)などは、法律によって会社が源泉徴収・控除することが義務付けられています。
- 労使協定がある場合: 法律で定められた項目以外(社宅の家賃、社員食堂の代金、旅行積立金など)を差し引くには、会社と労働者の代表が書面による**「賃金控除に関する労使協定」を締結しなければなりません。
2.「労使協定」締結の重要性とルール
会社が勝手に給料からお金を引くことを防ぐために、この協定は必須です。協定がないまま法律外の控除を行うと、労働基準法違反となります。
労使協定に記載すべき内容
- 控除の対象となる具体的な項目: 「親睦会費」「社宅利用料」など。
- 控除を行う日(時期): 毎月の給与、賞与時など。
- 有効期間: 一般的には1年更新など。
誰と締結すればいいのか?
次のいずれかの相手と、書面で契約を交わし署名・押印します。
- 労働組合: 従業員の過半数で組織されている場合。
- 過半数代表者: 労働組合がない場合、民主的に選出された従業員の代表者。
3.運用上の留意点
- 届出は不要、周知は必須: 36協定などとは異なり、賃金控除の労使協定を労働基準監督署に届け出る必要はありません。ただし、社内掲示板やネットワークを通じて、全従業員がいつでも内容を確認できるように「周知」しておく義務があります。
- 自由な意思に基づく同意: 大前提として、賃金は労働者の重要な財産です。会社が強制したり圧力をかけたりして同意させた場合や、労働者の自由な意思に基づかないと判断される控除は、無効となるリスクがあります。
まとめ
給与計算の実務においては、まず「法律で決まった項目以外を引いていないか」を確認し、もし引いている場合は「正しく労使協定が結ばれ、周知されているか」を必ずチェックしてください。
(参考資料)
・事業主の皆様へ 賃金控除に関する労使協定を締結していますか?(神奈川労働局 相模原労働基準監督 リーフレットPDF)
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/content/contents/002230320.pdf
注意
個々の事情により判断が異なる場合があります。具体的な運用については、労働基準監督署や弁護士、社会保険労務士等の専門家へご相談ください。
